坂野友軌 [BANNO Yuki]_web - Part 2

Particularという道

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particularCard

合間を縫ってちらほら動画を出していたParticularについてですが、こちらも記事にしてまとめておこうと思います。基本的にはYoutubeにあげている「Particular主体のエフェクトサンプル」の埋め込みで、前後にちょっとした文章を足すだけの内容です。

 

僕がParticularを選ぶ理由

Particularは、AE上の3D空間にパーティクルを作成するプラグインです。また、3DソフトからAEへカメラやヘルパーの位置情報を持ち込めれば、3Dの出力素材と挙動を連動させることができます。僕はこの仕組みを利用して、作画的なエフェクトツールとしてParticularを使っています。
主な利点としては、

・AE上で使うので、レンダリング工程を省けて、最終ルックも同時に詰められる
・エフェクトコントロールパネルに操作系が集約されているので、あちこち行き来しなくていい(プリセットの流用も簡単)

という2点があげられます。
一枚絵の洗練度や挙動の複雑さで言えば、2Dの作画や3Dのシミュレーションに劣る部分はあるかもしれません。しかしながら、上記の点からもわかるように、Particularは小回りが利きます。物理的なエフェクトを専門でやりたい、という方は他のツールをメインに据えるべきですが、アニメ系のCGアニメーターが状況に応じて身軽に扱うには、Particularという選択肢は、ひとつありなのではないかと思います。

 

01-使用頻度の高いエフェクトと追従の基本

 

粗末な書き文字ですが、エクスプレッションの補足です。exp補足

 

ヒットエフェクト/煙/マズル/ガラ、基本的なものを抑えました。どれも粉が空間に飛び散るものと思えば、それなりに作れます。煙は後の2カットでも多用していますが、基本的にはParticular+Vector Blurの組み合わせです。TypeをDirection Fadingで足すのが最近の好み。

02-ミサイル&爆発及びObscuration Layerによるマット切り

 

Obscuration Layerについての補足です。
平らな地面の時限定ですが、煙の接地感が出せます。この動画の平面はサンプル用に小さくしてありますが、実際には一面覆うように、大きくして使っています。
ObscurationLayer

 

ミサイルと爆発を例に挙げています。大きい爆発は力業な感もありますが、ミサイルなど、細々としたものをたくさん置いていく時には有効に使えます。Obscuration Layerに関しては、Particularらしい簡易さではありますが、今後OBJを使って立体でもマットが切れるとありがたいなと思います。

03-空間の描写とタービュランスによる微調整

煙と塵だけですが、3つのカットの中では、最もメジャーなParticularの使い方だと思います。いくら立体的にカメラを動かしても、空気のない3D空間では、距離感を情報にして足さないと奥行が出ませんから、そういった点で、空間に加筆できるParticularは本当に助かります。

 

見立ての精神がParticularを活かす

冒頭の内容ともかぶりますが、最後にParticularを使うメリットデメリットをまとめておきます。これらはあくまで、作画的なエフェクトツールとして、2Dの作画、あるいは3Dのパーティクルシステムと比べた時に、という話です。

【メリット】
・レンダリングの工程を省けると同時に、最終的なルックを確認しながらパーティクルの調整をすることができる。
・エフェクトコントロールパネルに操作系が集約されているので、比較的早く作れる。
・AEさえワークフローに入っていれば、3Dソフトの種類に左右されない。
・ランダムシードを使えば、コピペばれを回避できて、別案件での流用にも不安がない。

【デメリット】
・キャラと共に3D空間で確認することができない。
・3Dのパーティクルシステムと比べると、できることが限られる(衝突やフォースによる複雑な制御、立体的なシェーディングなどは難しい)
・3Dソフトから位置情報のデータをAEに読み込む手間が必要(maxだと、わりと時間がかかる)。

Particularの武器を総じてまとめると、カジュアルさ、です。これは、様々な制約を逆手にとって「見立て」の表現として進歩した日本のリミテッドアニメーションと通ずる部分だと思います。時間だったり、お金だったり、人だったり、多くのものが足りない中だからこそ、限られた機能を頓智で使って、ただの粒を様々なものに見立てていく。単に扱い易いだけでなく、そこにアニメ表現としての理も見い出せるからこそ、僕はParticularを使い続けています。

今回のサンプルは、OBJエミッターのくだり以外Particular2でもほぼほぼ再現可能ですので、4(最新のバージョン)が手元になくても良かったら触ってみてください。

-デモカット
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デモカットについてのもろもろ

投稿日:

実は去年の10月から作業を始めていたデモ用のカットなのですが、今月やっと3つ目の公開に至り、僕の中では一旦のキリとすることができました。習作的な側面もあるのですが、今までの習慣にならって、今回の3つのカットで自分が志したことをまとめておこうと思います。

 

動きが主役の映像は、3つの種類に分けられる

大学生の頃、「スポーツ映像論」という授業を受けていました。一般教養科目でありつつも興味深かったその授業のレジュメを、僕は今でも保管していて、そこで語られている内容のうちのひとつが、上記のようなことです。

3つというのは、
・スラップスティック
・ミュージカル
・活劇
の3つであり、映画がトーキーになって以来、物語主導の作品が主流となった現在でも、「動くことが面白い」というアトラクション性を強く持つジャンル、という意味で挙げられています。
僕がその授業を受けていたのは2012年で、現在では映画も含め動画コンテンツのあり方は日々変わってきている印象もあるのですが、上記3つが動きを主役としたジャンルであることは間違いないと思います。

業界に入ってから今までアクションばかりをやってきて、これからもこの道を歩んで行きたいと思っていた僕は、デモカットを制作をするにあたって、これら3つをジャンルをテーマに据えました。野球選手であれば「走攻守」というように、アクションアニメーターにおける「走闘舞」という形で、自身の力量を測れると思ったからです。

一つ目から、活劇/スラップスティック/ミュージカルの順に対応しています。

 

↓各カットの埋め込みと、簡単な紹介文はこちら
https://bannoyuki.com/animation/demo

 

コンテンツに依存しないことの価値

CGアニメーターの仕事は、誰かが考え出して、誰かがデザインし、誰かがモデリングしたキャラクターを動かすことです。自分と明確に切り離されているはずのキャラクターと、動きを通じて融合していく感覚は、この仕事でしか味わえない醍醐味と思っているのですが、一方でキャラクターや物語に導かれて芝居ができてしまう故、自身の能力や特性が自分でもわからなくなります。そろそろ若手とも名乗れなくなった今頃にデモカットを作ろうと思ったのは、自身のそういった部分の不明瞭さが気になったからでした。
故に、自身でコンテンツを作るのではなく、匿名性の高い素体と空間を使っています。提示したいのは、あくまでアニメーターとしての自分のあり方で、それ以外の要素は極力省きたかったからです。後から見返して、”20代のアニメーターとしてのセルフポートレート” になれば、という思いで制作しました。

主役機全身。デザインもモデリングも基礎を学んだことのない身ですが、プロポーションやシルエットはこだわって作りました。このあたりは人間に近ければ近いほど、動きは見せやすいです。

 

アーティストとしてのアニメーターでありたい

「今日も命があるのなら、」そう思いながら過ごす日が増えました。フリーになって以降、自分が一番知ったのは、自分自身のことでした。

今日も命があるのなら、僕はできるだけ、自分がやることに意義があることに、その時間を捧げたいです。アニメーションを作るのは、とても時間のかかることで、ひとつのプロジェクトでそれなりの成果をあげようとすれば、短くても2カ月、長いと1年以上の時間が奪われます。先が長いかも知れぬ人生とはいえ、今の年齢でしか作れない動きもあります。

誰でも良い仕事をするくらいなら、僕は家で自分のアニメを作ります。自分がやることに意義があることって何よって、自分で作って提示していかないと、誰にもわからないのだから。

デモ用のカットって何なんだって、これはむしろ、無駄な仕事を請けないための魔除けです。
どのカットも10秒を超えていて、イラストなんて目もくれず、カメラと共にどこか別の境地へ動き続けるのです。

僕はこういう道を教えてもらって歩んできた、こういう筋のアニメーターであって、これからだってこの道を歩んでいきたい者です。

今回のデモカットをご覧になって、その上で振りたい仕事がもしお手元にありましたら、ご相談いただけると幸いです。

-デモカット
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川はよきかな

投稿日:

栃木・蔵の街大通りもう随分と経ってしまったような気もしますが、5月の11,12日に栃木・蔵の街かど映画祭に行ってきました。今回も関係のない写真ばかりですが、撮ってきたものを並べようかと思います。

1日目

せっかく栃木まで行くので、日中は日光まで足を伸ばしました。修学旅行で行かれる方も多いようですが、僕は行ったことがなかったのです。

藤家 夕陽 階段

日光東照宮なども行ってきましたが、そちらの写真はありません。鳴き竜の実演がきぃーんと響いて楽しかったです。
夜に栃木市まで戻って、同映画祭の目玉企画『秒速5センチメートル』の屋外上映をチラッと観ました。想像以上に人が多くて驚きです。
屋外上映

出店があるのも驚きですが、この左のほうに長椅子が何列も並んでいて満席状態。画像内の倍くらいの方がいたのではないかと思います。
疲れていたので、すぐにホテルに入りましたが、遠くから「One more time,One more chance」が聞こえてきて、ああ終わるな、という体験をしました。

2日目

2日目は朝からアニメ作品の上映があったので、観てきました。
上映会場_01 上映会場_03 上映会場_02

一番乗りだったので、会場内部の写真も撮らせていただきました。小さな会場ですが、伝統ある家屋であることは端々から感じられますし、座布団で観るというのはとても新鮮でした(キリンビールの冷蔵庫……!)。

上映や表彰式の前後にもいくらか写真を撮ったので、並べます。

水路裏跡地 川の谷間 二手 道小屋02川 矢車菊ドラム缶平屋水路小屋川沿い

河川敷に咲いていた青い花は、googleで調べたところ、おそらく矢車菊なのではないかと。ドイツの国花でもあるそうです。綺麗でした。
川沿いはちらほらと営みが垣間見えて良いですね。

表彰式は栃木高校の講堂で行われました。
栃木高校_門 栃木高校_講堂

風格のある空間でした。実際非常に価値があるそうで、文化財にも登録されているらしいです。

アニメ作品は4つしかないし、ひょっとしたらアニメの最優秀賞はなくもないのではないか、などと思っていたのですが、MATSUMOさんの『ぼくらの自由研究』に奪われてしまいました。
残念ですが、納得です。伊勢崎に続き今回も拝見させていただきましたが、改めて僕は『ぼくらの自由研究』は好きな作品だと思いました。
良い意味でカッコつけたところがなく、アニメに対して、エンタメに対して、とても誠実に向き合った作品だと思います(先輩に対して言うのも恐れ多いのですが)。

ちなみにMATSUMOさんとは、空いた時間で一緒に回らせていただいたりもしました。いろいろお話もできて楽しかったです。
今回はデコボーカルさんともお知り合いになれましたし、アニメ、実写関わらず、こうして映画祭を重ねるごとに同じ志を持った方とのつながりが生まれてくることに、少し喜びを感じています。

仕事しかしていなかった頃は、交流関係は狭まっていく一方だったので、改めて、自主制作を作って映画祭にも応募して、といった道も歩んだことを、良かったのかなと思えます。

次があるかはわかりませんが、あればまた楽しみにしたいです。

-コンペ
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こちらは、CGアニメーターの坂野友軌が、自身の活動をまとめているサイトです。近況はTwitterにて。

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